1. はじめに
GW前の4月下旬の週末、新潟県の松之山温泉に行ってきた。松之山温泉は日本三大薬湯として知られ、塩分の強い泉質が特徴。また毎年1月15日に「むこ投げ」祭りが行われ、新婚の新郎を崖の下数メートルの雪の上に投げ落とす様子が全国ニュースでよく放送される。米どころ新潟県の長野県境に近い平野の少ないこの地域では、棚田で米作りが行われ、美しい棚田の風景でも有名である。
私は6、7年前にこの地方出身の人から松之山温泉と棚田について聞き、一度訪れてみようと思っていた。ところが2011年3月12日、つまり東日本大震災の翌日、この地域を長野県北部地震が襲った。松之山地方は震度6弱で、地崩れした被害の様子がテレビで報じられた。しばらく行くのを見合わせたが、気にはかけていて、今回やっと実現ということになった。
実は最近体がだるすぎて4月には1日お休みを取ったくらい調子を崩していたため、前から行ってみたかった温泉へ出かけることにしたのだった。
東京駅 → (上越新幹線) → 越後湯沢 → (ほくほく線) → まつだい
まつだい → (東頸バス) → 松之山温泉
という行程。
2. 東京から松之山温泉
上越新幹線もほくほく線も今回が初めてだった。初めての路線を旅するのは楽しい。早めの新幹線に乗ったが、越後湯沢は食事処や酒ミュージアムなど見所があって、時間が潰せた。
越後湯沢から「ほくほく線」に乗り換え。正確には越後湯沢から六日町まで上越線を走り、そこからほくほく線に入る。地図で見るとほとんどトンネルという、この路線に乗ってみたかった。北越北線と北越南線のどちらのルートにするかで紛糾した後に北越北線が選ばれ、そこから「ほくほく線」という名前になったという。
乗車したのは「ゆめぞら」という快速列車 (下左)。上越線区間は雪山の風景が美しく、旅に出たという雰囲気になった (下右)。
この「ゆめぞら」、トンネル区間では列車天井にさまざまな映像が投影される。そうとは知らずに乗車して、おお!っとなってしまった。
天井のふちの数個のプロジェクターから投影してるが、特殊な技術開発が必要だったようだ。
北越急行「ゆめぞら号」|映像情報システムソリューション|三菱電機エンジニアリング株式会社
まつだい駅到着。少し待って、バスで松之山温泉へ。
3.松之山温泉
午後1時半着のバスで到着したため、少し温泉街と周りを歩くことにした。
温泉街といっても、旅館は10軒ほど。
温泉街を抜けると、不動の滝が見える。
右手には、むこ投げが行われる薬師堂。
薬師堂の右手に子安観音がある。
薬師堂からの温泉街の眺め。
温泉街は北と南が小高い丘陵となっていて、散策できる。地図も用意されている。この丘陵を散策したが、詳細は別記事にする。
旅館は和泉屋さんに泊まることにした。天気予報も気にしながら直前に行くことを決めたため、空室があって、旅館のHPに「おひとりさま」でも大丈夫と書いてあるところにした、という理由。
こじんまりとした旅館だが、温かく迎えてくれる雰囲気で、8畳和室トイレ付き、立派な食事、そして私の訪れた日は宿泊客が少なかったため温泉に1人でどっぷり浸れて、満足した。
松之山温泉の源泉は90℃以上ある高温らしい。和泉屋さんの内湯は普通に入浴できる湯温だったが、露天風呂は熱めだった。温泉の湯は飲めないが、顔を洗ったときなど口に付くと塩濃度が高いことがわかる。
2日目。車ではなくバス利用の場合、2日目の朝のバスがちょっと困る。松之山温泉発は、7時55分発の次が11時発で、前者は早いし、後者には少し間があることになる。前日遅くに到着した場合は、この間に薬師堂など回るといいだろう。私は結局周辺の散策コースで前日行かなかったところを歩いたりしたのだが、地図に載っていた「安吾の散歩道」を歩いて松之山の町のまで歩けばよかった。
今回訪れなかったが、薬師堂方面へ温泉街を過ぎたところに古民家を改造して作った「地炉」という施設があり、足湯があったり温泉たまごが食べられたり、その他いろいろイベントをやっているようで、時間が合えば覗いてみるのもよかったろう。
何年も気にかけてきたので、5年前の地震はどうだったのか聞いてみたかった。旅館で聞きそびれたため、おみやげ屋の人に尋ねてみたところ、いろいろお話を聞くことができた。やはりかなりの被害が出て大変だったようだ。断水した住民のために温泉を無料開放したり、雪が溶けてから被害が新たにわかったりしたそうだ。現在は温泉はもちろん普通に営業している。しかし山あいで造成工事が行われていたところは、もしかしたらまだ地震の影響が残っているかと思ったりした。
4. 美人林とキョロロ
バスで移動する場合、美人林とキョロロへは「堺待」で下車、徒歩で約20分。
美人林。ぶな林。Beech forest。新緑が美しかった。
歩く範囲はそれほど広くはなく、30分ほどぶらぶらして、向かいのキョロロへ。
美人林と道路をはさんで、「森の学校」キョロロがある。十日町市立里山科学館。松之山地域の自然と歴史を紹介し、環境保全活動もしている。子供と参加できる自然体験イベントも実施している。パネル展示の他、生きてるヘビやイワナなどの魚もいた。子供たちはザリガニ釣りに興じていた。周りにあるキョロロの森へスタッフと自然観察に出かける家族もいた。
展望台へは階段で上ることができる(階段はアート作品となっており、全体が暗く照明が工夫されている)。展望台からの眺め。ガラスは汚れてたけど、写真ではあまりわからない。
キョロロを出て堺待バス停まで歩いて戻り、バスでまつだい駅へ。越後湯沢経由で東京駅に帰った。
5. 最後に
今回の松之山行きの動機の1つは、美しい棚田を見たいということだった。しかし広大な棚田の風景を見るには車での移動が必要で、松之山温泉街界隈と美人林周辺を徒歩で散策するだけではそのような棚田を見ることはできず、残念だった。「安吾の散歩道」を歩けばよかったろうか。次はバイクで来て、棚田ハンターになろうかと思う。
松之山温泉の人たちは温かく、道を歩いていると「こんにちは」と挨拶されることもあったし、旅館、案内所、お土産屋さんもみなさん親切に接してくれた。今までは1人では温泉旅館を断られたり、2人分に近い料金を支払ったり、何かと肩身の狭い思いをしてきたが、今回はそんなことを感じることなく楽しむことができ、よい旅行だった。
5. データ、リンク
東京から松之山温泉まで、新幹線とバス利用で、3-4時間。ほくほく線とバスは本数が少ないため時間は要チェック。鉄道交通費 (往復、含特急料金) ¥15,060。宿泊費¥12,000。
・ほくほく線時刻表
・まつだい-松之山温泉バス時刻表 (東頸バス)
観光、宿泊、交通の案内はこちらにまとめられている。
サイト内の「旅館宿泊レポート」はおもしろく参考になりそうだ。
・松之山温泉合同会社 まんま - どんな旅館があるの?そんな疑問を解消する7つの旅館・宿泊レポート
松之山温泉街には「里山ビジターセンター」という案内所があるが、「まんま」の運営らしい。