「二兎追うものは三兎を得る」
恋人を二股かければ三股だっていけちゃうぞ、という話ではない。少なくともここでは。
学習において、勝手に自分で制限せず、どんどん積極的に学んでいこうということ。
ドイツ語を勉強したい、でも英語も勉強しなければならない。そんな状況のとき使う。あるいは1つの言語で、今は会話を勉強するより読みに集中したい、と思うようなとき。両方に精を出せば、1足す1を越えたさらなる飛躍があるかもしれない。
私の好きな格言の1つだ。狭く制限せず、両方ものにして、その先に進もう。制限をかけそうな気持ちを解いて、積極的な気分にさせてくれる言葉である。少なくとも気分は。
この言葉を私に教えてくれたのは、英会話教材のキャッチセールスをしていた20代後半くらいのお姉さんだった。今から25年ほど前、場所は当時住んでいた小田急線向ヶ丘遊園駅近く。
何と言って声をかけられたのかは覚えていない。「英語に興味ある?」だったかもしれない。英語には常に興味があった。実際その時も近くの英会話学校に通っていた。セールス教材を買うつもりはなかったが、どんな商品を売ろうとしてるのか話を聞いてみようとしたのかもしれない。お姉さんと一緒に喫茶店に入った。
話の途中、おそらく私があれもこれもやっては何も身につかない、二兎追うものは一兎も得ず、みたいなことを言ったのかもしれない。長髪ソバージュのちょっと綺麗なお姉さんは、私の目を見据えてはっきりした口調で言ったのだった。「二兎追うものは三兎を得る。」
その時どんな会話をしたのかは覚えていない。キャッチセールスの教材を買うこともなかったし、お姉さんと再び話すこともなかった。ただお姉さんの放ったその格言は、その後もずっと私の中で生き続けたのだった。
喫茶店は向ヶ丘遊園駅近くの「珈琲館」だったのは覚えている。地図を見ると、この喫茶店は今はもうない。遠い遠い昔の記憶のひとコマである。。