今月11日から13日までイギリスでG7サミットが開催された。昨年はコロナ禍などでサミットは開催されず、2年ぶりの開催だった。(6月末になりサミットも忘れ去られそうな頃にあわてて記事を書いている…)
場所はイギリスのコーンウォール (Cornwall)。したがって今回のサミットはG7コーンウォール・サミットとも呼ばれる。ニュースではもっぱら「イギリスのコーンウォールで開催されているG7先進7ヵ国首脳会議に出席している菅首相は…」などと伝えられた。
しかし。ひと口にコーンウォールといっても広い。
私は旅行で一度訪れて多少知っていることもあり、ニュースを見ていて、コーンウォールのどこ?? と思うことがあった。
そこで今回のサミットの主要場所とニュースに現れた場所を、メモ代わりに記録しておく。
コーンウォールはイギリス南西部に突き出た半島の先端部分を占める州 (County)。(*1)
面積3,563㎢、人口57万人。日本でいえば鳥取県が面積3,507㎢、人口57万人なので、広さや人の込み具合は鳥取県を思い浮かべればいいかもしれない。鳥取県でイベントが開催されたと聞いたら、鳥取県のどこ?と思うだろう。同様にコーンウォールでサミット開催なら、コーンウォールのどこ?となるわけだ。
ちなみにイギリスの中でのコーンウォールのイメージは、海に囲まれ海の幸がおいしく自然が美しい地方。イングランド中心部の喧噪から切り離されて、旅行先として、また引退してゆっくり住んでみたい場所としても人気がある。
この記事で言及した場所を下の地図に示す。 (地図はgoogle mapをベースにした画像ファイル。コーンウォール左のほう3分の2くらいの範囲。)
(1)~(3)部分の拡大図を示す。
(1) カービスベイ・ホテル (Carbis Bay Hotel)
今回のサミットのメイン会場。美しいカービスベイ・ビーチ (Carbis Bay Beach) に面したホテル。(*2)
海が窓の外すぐに見える部屋での会議は、このホテルだ。(*3)
各国首脳のビーチでの記念撮影がよく報道されたが、ホテル前のビーチ。(*3)
Google map ストリートビューで同じ方向を見てみる。
https://goo.gl/maps/tNGExRZrXWSCBFxt9
(2) トレゲンナ城 (Tregenna Castle)
カービスベイ・ホテルから1Kmほどのところの丘の上にあり、周辺が見渡せる。(*4)
トレゲンナ城は各国首脳の宿泊場所という記事があった。
G7サミットが行われるホテルの評価は今ひとつ…会議室の建築で苦情も | Business Insider Japan
実際にバイデン大統領は最高級の西ウイングの部屋だったらしい。このデイリーメールの記事によれば、ジョンソン首相はカ-ビスベイ・ホテル滞在とある。
菅首相は首相動静ではカービスベイ・ホテル宿泊と発表されていた。トレゲンナ城をカービスベイ・ホテルに含めての発表かもしれないし、移動せずカービスベイ・ホテルに宿泊だったのかもしれない。
こちらはNHKニュースから。記者らしき人たちがお城に入っていく様子。(*5)
またこちらのNHKニュースの場面で、向井支局長が立っているのはトレゲンナ城だろう。背景の芝生、左後方のコテージ、そして遠景にセント・アイブス (St. Ives) という構図は、トレゲンナ城だ。バルコニーと手すりがお城のどこかわからないが。(*6)
似ている構図をストリートビューで見るとこんな感じ。
https://goo.gl/maps/u7taV35M9WBuKyFW7
BBC記者が食事をしていたら散策中のバイデン大統領に出くわしたという記事があったが、建物の様子からトレゲンナ城だ。
When the US president sits at your table in the bar - BBC News
お城は首脳会議がカービスベイ・ホテルで開かれている時の、記者たちの待機場所だったのかもしれない。
(3) セント・アイブス (St. Ives)
セント・アイブスはカービスベイやトレゲンナ城と隣接している。というかこのあたりはセント・アイブスという町 (Town Council) の行政下だ。
セイン・アイブスにはテイト・セント・アイブス (美術館) があり、訪れる観光客も多い。また日本にゆかりのある陶芸家バーナード・リーチが過ごした町としても知られる。私も訪れたことがある。しかし今回のサミットでは、この観光スポットへの訪問はなかったようだ。
サミット前にビーチで抗議のパレートが行われていた報道はあったものの、直接の舞台ではなかったセント・アイブスをここに含めたのは、次のNHKのニュース画像のためだ。(*7)
「サミットは今日が2日目の討議です」と言って映し出されたこの場所。右手前の白い建物はカービスベイ・ホテルではない。どこなのだろう? 実はこれはセント・アイブス・ヘッド (正しくは The Islandという名称) からの風景で、南南東方向にカービス・ベイのほうを臨んでいる (上記地図拡大図で、3番に立ち1番方向を見ている)。
https://goo.gl/maps/aeVXFYyuczvrg9zM6
手前のビーチはポースグウィデン・ビーチ (Porthgwidden Beach) で、中央左奥に見える白いビーチがカービスベイ・ビーチだと思う。
(4) エデン・プロジェクト (Eden Project)
ひとことでいえば巨大植物園。巨大温室の中に様々な生態系を実現している。2001年開園。エコとか持続可能性を考えるにはふさわしい場所だろう。サミット主会場のカービスベイ・ホテルからは、直線距離で55kmくらい東側に位置する。
(*8)
記念撮影のときの女王とジョンソン首相のやりとりがおもしろかった。
The Queen: Are you supposed to be looking as if you’re enjoying yourself?
PM Boris Johnson: Yes, definitely. We have been enjoying ourselves, in spite of appearances.
女王「楽しそうにすべきなんですか?」
ジョンソン首相「ええ、もちろんです。実はみんな楽しんでいるんです。見た目はともかく。」
日本語訳つき動画
be supposed to は「~することになっている」という意味で、比較的よく使われますね。
(5) ミナック・シアター (Minack Theatre)
海岸沿いの岩場に作られた野外劇場。
今回ファーストレディーたちがここを訪れた。下の画像 (左: ジョンソン首相夫人、右: バイデン大統領夫人)(*9) には映っていないが、菅首相夫人も訪れている。
私は20年前に訪れた。その時の写真。何かお芝居の練習をしているところらしかった。
20年前も今も変わってないね。こんな場所に劇場を作るなんて、さすがシェークスピアの国、芝居好きのイギリス人、と思ったものだが、劇場の原型は1930年代にこの地に住んだ Rowena Cade という女性により作られたというから、その歴史と女性の情熱に驚かされる。
(6) ファルマス (Falmouth)
コーンウォール南岸の港町。今回のサミットでは、ファルマスにあるコーンウォール国立海事博物館 (National Maritime Museum Cornwall) がプレスセンターとして使われた。北岸のカービスベイ・ホテルからは直線距離で30kmのところで、なんとなく不便な気はするが。
とは言え、NHKニュースで支局長がリポートしたこの場面はファルマスで、海事博物館の後ろ辺りではないかと思う。(*7)
(7) ニューキー (Newquay)
コーンウォール北岸の街。美しいビーチで知られ、シーズンは海水浴客やサーファーで賑わう。今回のサミットでは、各国首脳はニューキー郊外のコーンウォール空港からコーンウォールにアクセスした。
サミット期間中、NHK長内記者はニューキーから連日レポートした。(*7)
場所はアトランティック・ホテル・ニューキー (Atlantic Hoel Newquay) の前あたり。背景はトーワン・ヘッド (Towan Head)。
ストリートビューで見るとこんな感じだ。
https://goo.gl/maps/RyYDubFDZWXr5NGQA
菅首相もサミットを終え帰国する前に、同じ場所で日本記者と会見した。(*10)
首相の左側にぼんやりと見える白い小屋は、トーワン・ヘッドの先、上の長内記者画像では右端を少し越えたあたりに位置する。
https://goo.gl/maps/MQhr4c77BpP657MB8
サミット期間中、NHKはアトランティックホテルを基地として使用していたのかもしれない。
さて時間的には戻るが、サミット開催直前に、「ワクチンを分かち合おう、ワクチンの特許をなくせ」という抗議のメッセージとともに、G7首脳たちがビーチに描かれた報道がなされた。(*6)
これはニューキーのウォーターゲート・ビーチ (Watergate Beach) らしい。
G7 signs of protest in Cornwall – in pictures | World news | The Guardian
ストリートビューで見て、背景は一致する。実際はこのストリートビューのポイントよりもう少し奥に描かれたのだろう。
https://goo.gl/maps/WNBnvzpzdu6UhdhU8
ここでNHKの開催直前のニュース画像を出したのは、実は次のポーツレス (Portreath) の話題につなげるため。
(8) ポーツレス (Portreath)
6月11日金曜日NHKニュースウォッチ9は、とあるビーチの映像を映し出し、「こちら間もなくG7サミットが開かれるイギリスのリゾート地、コーンウォールです」と和久田アナが述べて始まった。(*6)
すぐに画面が切り替わり、1つ上のG7首脳がビーチに描かれている映像に変わった。見ている人は何となく、最初に映し出されたビーチに抗議の絵が描かれたと思ったかもしれない。しかしこれは絵が描かれたウォーターゲート・ビーチではない。またサミット主会場のカービスベイや、主会場近くのセント・アイブスのビーチでもない。
私は最初これがどこなのかわからなかったが、なんとか探し当てた。ポーツレス・ビーチ (Portreath Beach) だ。
https://goo.gl/maps/NyDoCWjhN2GGZRuu6
ニューキーから南西20Km、カービスベイから東北東14kmに位置する小さなビーチ。今回のサミットの舞台となったわけではないが、NHKはなぜこの場所の映像を使ったのだろうか。おそらく、小さな町のきれいなビーチが「いい雰囲気」だったのではなかろうか。それでよい。コーンウォールには魅力あるビーチが沢山ある。
以上、2021年G7コーンウォール・サミットの主な会場と、ニュースで見かけた場所について。ニュースの中では場所は「コーンウォール」としか言及されなかったが、主な会場の他、なんとなく映った風景の場所も特定できてよかった。
コーンウォールにはまだまだ見どころがたくさんある。フランスのモン・サン・ミシェルに似たセント・マイケルズ・マウント (St. Michael's Mount) や、イングランド本土最西端であるランズ・エンド (Land's End) などは有名だ。昔自分が訪れたときの写真など、またいつか別記事に掲げたい。
[画像引用]
*1) https://en.wikipedia.org/wiki/Cornwall
*2) https://www.carbisbayhotel.co.uk/the-estate
*3) https://www.carbisbayhotel.co.uk/blog/the-2021-g7-summit-at-carbis-bay
*4) https://www.tregenna-castle.co.uk/the-resort/gallery/
*5) 2021年6月11日(金)NHKニュース7
*6) 2021年6月11日(金)NHKニュースウォッチ9
*7) 2021年6月12日(土)NHKニュース7
*8) https://www.bbc.com/news/live/uk-57433737
*9) https://www.bbc.com/news/uk-57438878
*10) 2021年6月14日(月)NHKニュースウォッチ9