独男の雑記帳

60代コミュ障独身男(結婚歴なし)の存在していた記録

google囲碁がプロとfacebookに勝ったってよ

28日未明からこのニュースでネット界は騒然としている。Googleが開発した囲碁プログラムがプロ棋士を破ったという。

私はディープラーニングやAIアルゴリズムは全く知らないし、コンピューター碁の変遷も詳しくなく、また囲碁も級レベルなので、内容にコメントなどはできない。リンクをぺたぺた貼りつけ出来事として記録しておきたい。

Nature 1月28日号にGoogle DeepMind社の論文が掲載された。

Mastering the game of Go with deep neural networks and tree search

Nature誌を購読してなければアクセスできないが、論文はDeepMind社ホームページにあるリンクから読むことができる。

https://storage.googleapis.com/deepmind-data/assets/papers/deepmind-mastering-go.pdf

ちなみに Nature の表紙も囲碁になっている (下のブログページに拡大画像がある)。一応囲碁になっているイラストなので対局の1場面から採ったものかもしれない。

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チェスやオセロではコンピューターが人間を上回るまでになっている。コンピューター将棋がプロ棋士に勝利したニュースも記憶に新しい。しかし囲碁については、盤の広さや有利不利の判定の難しさから、コンピューターがプロに勝つにはあと10年かかると言われていた。

DeepMind社はこの論文の中で、プログラムは既存のプログラムを凌駕し、欧州チャンピョンであるプロ棋士に勝利したことを明らかにした。

 

論文そのものの要約ではないが、内容を適当にかいつまんで日本語で紹介しているサイトとして、次の記事をリンクしておく (記事中の「マシンランニング」は「マシンラーニング」 追記: 記事訂正済み)

【韓国話題】イ・セドルに挑戦状投げた人工知能'AlphaGo'とは? : 【nitro15】
 

既存の囲碁プログラムとしては、モンテカルロ法を導入してコンピューター囲碁 を画期的に強くしたCrazy Stone、ネット囲碁サイトKGS囲碁ロボットZenなどがある。Crazy Stoneはアマ高段者レベルとされ、ハンディキャップ付きならプロ棋士に勝ったことはある。すなわち2008年に7子で青葉かおり4段に、2013年に二十四世本因坊秀芳 (石田芳夫9段)、2014年に依田9段をともに4子で破っている。

UEC杯コンピュータ囲碁大会 - Wikipedia

 

今回DeepMind社のプログラム AlphaGoは、Crazy StoneやZenなど既存プログラムを相手に495戦494勝。さらに 、2013、2014、2015年の欧州チャンピオンである Fan Fui (樊麾) 2段にハンデキャップなしで5戦5勝した。

論文にレーティング見積もりが載っている。

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一番左のdistributed AlphaGoは複数機のネットワーク (1202 CPU、176 GPU)、その右の Alpha Goは単独機 (48 CPU、8 GPU) 。Crazy Stone、Zen、Pachiの上のほうのピンク色は、最初4子をどこに置いてもいいというハンデを設定した場合。

Distributed AlphaGo (3140 Elo) はプロ5段、単独 AlphaGo (2890 Elo) はプロ2段でFan Hui氏 (2916 Elo) と同程度、Crazy StoneとZenはハンデありでアマ9段 (それぞれ2526 Elo, 2413 Elo)、ハンデなしならアマ6段相当 (それぞれ1929 Elo, 1888 Elo) になっている。ランキングはElo値に相当するKGSランキングとのこと。

Fan Hui氏は棋士ランキングでは632位。

Go Ratings

ちなみにこのランキングサイトによると、万波奈穂3段が2915Eloで634位であるから、Fan Hui氏は囲碁ファンに人気のまんいも(万波姉妹の妹)3段と同レベルともいえる。(EloはEloという苗字の人が考案した2人対戦ゲームのレーティングの単位。エロさではない、いや強いことはエロいかも。

実は 10月5日~9日にロンドンで行われたAlphaGoとFan Fui 2段との「公式手合い」ではプログラムが5戦5勝したのだが、時間制限を短くした非公式手合いでは5戦3勝、つまり人が2勝している。対戦データは論文に記載。

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このようにAlphaGoはコンピューター碁にブレイクスルーをもたらし、既存のプログラムより飛躍的に強くなった。素晴らしい。しかしこの論文の時点ではまだ5段程度であるらしい。

今年3月にAlphaGoと韓国のイ・セドル (李世乭) 9段との対戦がソウルで開催される。イ・セドル 九段は囲碁ファンなら誰もがその名を知っている世界トップ棋士の1人であり、上記ランキングサイトでは5位 (3515 Elo)。 AlphaGoが5段程度ならばまだ力は及ばないように見える。しかし3月までの数ヶ月の間にAlphaGoはさらに学習しさらに改良されているであろう。対戦がどうなるか熱い注目が集まっている。

 

Google はプロ棋士をハンデなしの手合いで初めて負かしたということであるが、実はFacebookも打ち負かしたのだった。

Facebook昨年11月論文を投稿し、AIを利用して囲碁プログラムを開発中であることを明らかにした。ちなみにプログラム名はDarkforest。

ついに人工知能が囲碁で人間に勝つ? フェイスブックが開発中 : ギズモード・ジャパン

Google DeepMindはFacebookの発表のすぐ後に、数ヶ月以内に囲碁に関して「大きな驚きとなる」発表をすると語った。後にわかることだが、Facebookの11月の発表の時点で Google DeepMindはすでにAlphaGoとFan Hui 2段の対局を終了しており、Natureに論文も投稿済みだった (Nature論文の投稿は11月11日、アクセプトは2016年1月5日)。

グーグルらが人工知能で「囲碁の謎」に挑む理由 Page2 « WIRED.jp

1月25日にGoogleは「27日に囲碁について発表がある」と報道陣に知らせた。

1月27日、Facebook CEOのMark Zuckerbergは、「Facebook囲碁プログラムが人間に勝つまであと少し」とFacebookコメント論文を改訂した。しかし、同日遅くにGoogleは「人間に勝った」と発表したのだった。

ついに歴史的な日が…。囲碁のプロ棋士、グーグルの人工知能に破れる : ギズモード・ジャパン

開発競争でGoogleに完敗したFacebook。25日のGoogleのお知らせの時点で、Facebookは何もしないで静観してたほうがよかったのではという皮肉った (British irony?) 見方も出てくる次第である 。

No Go: Facebook fails to spoil Google's big AI day | Technology | The Guardian

 

少し前まではコンピューターが囲碁のプロ棋士と対等に戦えるまでにはあと10年かかると言われていた。それが一気に達成された今回の発表は衝撃的だった。囲碁界が活気づき、人とAIが切磋琢磨して盛り上がっていってほしい。科学・技術は革新的に進歩することを教えてくれ、勇気を与えてくれる出来事でもあった。

 

DeepMind社は2010年にDemis Hassabisらによって設立され、2014年にGoogleに買収された。FacebookによるDeepMind社の買収交渉が前年に決裂したのち 、Googleが買収したと言われている。

Google DeepMind

 

2016年1月30日: 誤字訂正のほか、GoogleFacebookの項を若干書き直した。