英語の時間です。
flora という単語があります。植物は場所により生息する種類が異なりますが、flora はある地域に生息している植物の種類を表します。「植物相」というのが適切な訳語のようです。植物相には時間的な区分もあり、ある時期に生息した植物の種類を表すこともあります。
Atlas of Japanese Flora は「日本植物分布図譜」という本の英語タイトルですが、日本のどの地域にどのような植物が生息しているかをまとめた本ということになります。
この単語はやや専門的な感じもしますが、一般の文脈でもときどき見かけ、中級レベル以上の英語学習者なら知っていてもいい単語と私は思います。
なお flora は細菌の種類に対して用いられることもあり、bacterial flora、 日本語では「腸内フローラ」あるいは「腸内細菌叢」として、健康に関する文脈でよく耳にします。
さて植物相は flora、では動物相、つまり動物の地域や時期による種類を表す単語は何でしょうか? 答えは fauna ですね。flora が flower と関連した単語だとはわかりますが、fauna の語源は何でしょうか。ローマ神話の豊饒と大地の女神ファウヌスに由来、とのことです。
動物相 - Wikipedia
個人的には flora よりは出会う機会が少ないかなと思う単語ですが、対になる語なので、植物相 flora、動物相 fauna と覚えておいて損はないと思います (得することもないかもしれませんが…)。
植物は flora 動物は fauna。では鳥はどうでしょうか。鳥類相は avifauna になります。鳥を表す接頭辞 avi- + 動物相 fauna ですね。
鳥を表す avi- で始まる単語にはときどき出会い、よく見かけるのは avian flu 鳥インフルエンザ、aviator 飛行士 でしょうか。
さてさて、それでは魚ではどうでしょうか。魚類相は ichthyofauna、魚を表す接頭辞 ichthyo- + fauna です。ちなみに ichthyo- の発音は /ɪkθɪə/ (イクシオ) です。
というわけでここまでのまとめです。
植物相 flora、動物相 fauna、鳥類相 avifauna、魚類相 ichthyofauna
さらに補足します。
鳥を表す接頭辞には avi- の他に ornitho- があります。鳥類学は ornithology、鳥類学者は ornithologist。
魚を表す接頭辞は先ほどの ichthyo- があり、魚類学は ichthyology、魚類学者は ichthyologist ですが、 魚を表す接頭辞にはこの他に pisci- があります。piscine は魚の という意味の形容詞。またこの形で一番よく見かける単語は Pisces でしょう。12星座の1つ「魚座 (うお座)」で、雑誌などでよく見かけますね。ちなみに発音は piscine は /ˈpɪsaɪn/ (ピサイン) ですが、Pisces は /ˈpaɪsiːz/ (パイシーズ) です。
実は avi- (鳥) と pisci- (魚) はラテン語由来、ornitho- (鳥) と ichthyo- (魚) はギリシア語由来です。
すると先に、鳥類相 avifauna、魚類相 ichthyofauna と書きましたが、avifauna はラテン語由来の接頭辞なのに ichthyofauna はギリシア語由来接頭辞で、ちぐはぐな感じがします。また fauna 自体ラテン語由来なので、ichthyofauna はその点でもちぐはぐです。
実は魚類相には piscifauna という単語も存在します。ただしあれこれ検索してみると、どうやら piscifauna よりも ichthyofauna のほうがよく使われているようです。なぜ ichthyofauna がよく使われるかなどの事情は私にはわかりません。専門の方に聞いてみたいところです。
表にするとこうなります。
ラテン語由来 | ギリシア語由来 | |||
鳥 | avi- | avian aviator avifauna |
ornitho- | ornithology ornithologist |
魚 | pisci- | piscine Pisces |
ichthyo- | ichthyology ichthyologist ichthyofauna |
いかがでしたか。flora という比較的よく見かける単語から始まり、調べていくと英単語の世界が広がっておもしろいですね。
最後に ichthyo- を使った文を1つ。
Sakana-kun is a famous Japanese ichthyologist. さかなクンは有名な日本人魚類学者です。
ググって調べてすぐにわかることをダラダラ書くのは気が引けますので、最後を「いかがでしたか」ブログ風にまとめてみたのでした。