leeway という単語がある。ある状況で当人に与えられている裁量、つまり自由に出来る行動や時間のことを意味する。
Local councils will be given some leeway as to how they implement the legislation.
地方議会はその法律を実施するにあたり、ある程度裁量が与えられる。(*1)
How much leeway should parents give their children?
親は子供にどれだけ自由を与えるべきか。(*2)
規則を定めたりするとき、すべて厳格に縛り上げるのでなく、少し当人に裁量を持たせる。その「余裕」や「ゆとり」が leeway。
もともとは船が風で進行方向から横方向にずれることを指したが、そこから転じて「余裕」の意味になったらしい。(*3)
私は leeway という単語がずっと好きだった。日本語でよく言うではないか、ブレーキに「あそび」が必要なように、心にも「あそび」つまり少しの余裕が必要と。leeway はその「あそび」に相当する感じがする。
緊張でガチガチになっていては、失敗する。張りつめた糸はちょっとした刺激で切れてしまう。少し余裕を持たせる必要がある。一乗寺下り松での吉岡一門との決戦を控え緊張が張りつめた宮本武蔵を見て吉野太夫は言う。琵琶の美しい音色は横木をゆるませて生まれる。ゆるみのない琵琶を弾くと、弦は切れ胴は裂けてしまうだろう。(*4)
がんじがらめの規則、1分1秒の余裕のない計画。それでは息が詰まり、事も行き詰まる。何かにつけ自分を締め上げる考え方をしがちな自分だからこそ、「あそび」を表す leeway という言葉が好きなわけだ。もっとも他人から見ると「お前は余裕を持ちすぎ」と思われているかもしれないが…
ともあれ、leeway という単語が好きだったという話。
英語の用法として、改めて調べてわかった注意点をメモしておきたい。
leeway は制約がある状況下で当人に与えられている裁量のことを指し、機械部品の「あそび」を leeway とは呼ばない。また心の余裕を leeway in mindと言えば伝わるかもしれないが、よく使われる用法というわけではないようだ。
ともあれ固いことは言わないで、leeway を持ちながら事に当たりたい。
*1. https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/leeway
*2. https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/leeway
*3. https://www.etymonline.com/word/leeway
*4. 心の「あそび」について思うとき、高校のとき読んだ吉川英治「宮本武蔵」にこんな一節があったことがいつも思い出された。具体的なことは忘れていたが、青空文庫で公開されているため該当箇所を捜し当てることが出来た。
この記事を書いたのは、宮本武蔵のこの箇所をメモしておきたいのと、高校時代に吉川英治「宮本武蔵」を読んだよ、たしか3回読んだよということを言っておきたかったのが動機の1つにある。