ロシア文学を読むと空見するタイトルだが、文学ではなくて文字を読む話。
以前ロシア語を少し習ったことがある。40歳の頃1年余り週2回のクラスに出てた。その当時はそれなりに単語を覚えもしたが、残念ながら今はもうほとんど忘れてしまっている。でも今もロシア語を読むことはできる。ロシア語を読むというよりは、ロシア文字 (キリル文字) の読み方はわかると言った方が正確かもしれない。表音文字なので、意味は分からなくても書いてある通りに読むことは出来るわけだ。そしてそれが出来るだけでも楽しいし役に立つ。
Алина Загитова
知らないと暗号みたいに見える。でも少し読み方を少し知っていれば
Alina Zagitova
フィギアスケートのアリーナ・ザギトワさんの名前とわかる。
Масару
マカピー (って何)? のように見えるが、ロシア語の c、p は英語の s、r に対応し、最後の y は u に対応する「ウ」の発音なので
Masaru
だ。ザギトワさんに贈られた秋田犬 (あきたけん、じゃなくて、あきたいぬ) のマサルくん。
ロシア語の c、p は英語の s、r になるといえば、かつてソ連の選手のユニフォームには「CCCP」と書かれていた。英語表記すれば SSSR、ソビエト社会主義共和国連邦の略だった。これは雑学ネタとして当時からよくテレビなどで取り上げられ、知っている人も多いだろう。
Рика Кихира
ザギトワさんの名前を出したならばこの人の名前も。P は r になり、и は i、「イ」と読み、
Rika Kihira
紀平梨花さん。グランプリファイナル優勝おめでとう!
モスクワを半日観光したことがある。やはり文字の読み方がわかるだけでかなり違った。日本語のガイドブックには、地名や駅名のロシア語表記にカタカタの読みが振ってある。駅で行き先を見つけるとき、ガイドブックで行き先の読み方を把握して、駅に表示してあるロシア語を見て探せばよく、楽だった。読み方がわからないと文字を照らし合わせなくてはいけなくなり、面倒だったろう。そもそも何が書いてあるかわからない文字に囲まれているのは不安なもので、読み方だけでもわかればストレスが減る。
ロシア語表記を見かけるのはロシア国内とは限らない。日本でも見かけることはある。今夏、北海道は釧路を訪れた。釧路駅前の交番の写真 (下左)。ロシア語で何か書かれている。拡大図 (下右)。
Полицейский пост Кусиро Экимаэ
英語文字に変換すれば、
Politseiskii post Kusiro Ekimae
となる。
Politseiskii は英語の police のような意味だろうと想像できて、「釧路駅前交番」とロシア語で書いてあるんだなとわかる。駅前は Ekimae というローマ字がそのままキリル文字に変換されている。わけのわからない文字列ではなくて、このようにわかるのが楽しい。
やはり日本で5、6年前のことだが、街の繁華街を歩いていたら、とあるお店のドアの貼り紙が目に入った。「XOCTECC」。ロシア料理とかロシア・バーとかの看板は出てなかったが、それを見てこのお店がロシア・バーだとわかった。英語表記では HOSTESS だからだ。ホステスを募集しているのだろう。暗号を解読できたみたいな、ちょっとした喜びがある。
街を歩いていてロシア語を見かけ、読んでみて意味がわかったときは嬉しい。ささやかな楽しみである。