barchan という英単語がある。
砂漠でよく見られる砂丘の形状の1つで、「三日月型砂丘」のこと。「バルハン」とも呼ばれる。
こんな形をしている。
図はこちらから
https://en.wikipedia.org/wiki/Barchan
砂の丘が風上から風下へ扇状に広がり、上から見ると三日月型に見える。風上側はゆるやかな傾斜で(15°くらい)盛り上がり、風下側は急な角度(30-35°)の斜面でへこみを持っている。上の2つの画像ではどちらも風向きは左から右になる。
地学英語といえば以前鍾乳石の英語を紹介したが、stalactite / stalagmite はおそらく学校で習う語でよく知られていて、普通の辞書にも載っている。しかし barchan はこの分野の専門家か、特別に砂漠や砂丘に興味を持っている人でなければ知らないのではないか。辞書も語彙数の多いものでないと載っていない。
一般的な単語ではなく自分も門外漢である専門用語を、なぜ今ここで取り上げたのか。他でもない。
barchan が ばあちゃん と読めるから。
ぱっと見、ばあちゃん? 「ばあちゃん」も英語になったのか?と思わせる。英語になっている日本語もいろいろあるわけで、日本で親しまれている語が英語になっても不思議ではない。
There are many barchans on the desert.
砂漠にお婆ちゃんが大勢居るのだろうか。あるいは、desert には「見捨てる」という意味があるから、見捨てられたお婆ちゃんがいっぱい、などという恐ろしい意味なのだろうか。
We found barchans on Mars.
火星でお婆ちゃんが発見されたとな!?
いえいえ。barchan は三日月型砂丘で、お婆ちゃんとは関係ない。
上の文は「その砂漠に三日月型砂丘が多くある」という意味で、下の文は「火星でも三日月型砂丘が見つかった」ということだ。そう、火星に存在するのは、お婆ちゃんではなくて、砂丘なのだ。
…まあ、間違うことはないかもしれない。とは言え、barchan という単語を見ると、こんな想像が浮かぶよね、、というネタでした。
ちなみに barchan はロシア語 бархан を英語表記したもの。もともとはカザフ語で、19世紀にロシア人科学者が中央アジアの砂漠の砂丘の形に名付けた名前らしい。ロシア語の x は日本語「は行」の息を強く吐く音に相当し、日本語で barchan を「バルハン」と呼ぶ場合はロシア語音を反映している。x音は英語では kh で表記されることが多いから、英語では barkhan という表記も使われる。
barchan は英語では「ばーかん」と発音される。
https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/barchan
barchan は砂丘なのにお婆ちゃんとか、もうバーカん。とここまで入れておいて記事を終えよう。